寄稿文の案内

伊藤清勝氏寄稿文:学校の先生方は悩んでいる・・・どうしたらよいのか?


2005年7月  伊藤清勝

 

まえがき

 

1997年神戸の14歳の少年がおこした事件のとき、あるテレビ番組で中学校長が「うちの先生方はとうとう起きたかと言って驚かなかった」という発言がありました。 このことは、学校現場では大変な状況になっているということを示唆していると私は受け止めたのですが、その後、教育関係者からは、この事件を本質的にとりあげ解決策を提言することなく現在に至っているように思えてなりません。何等原因が解明されず、根本的な対策がとられていないため、似たような事件がおきるたびに学校の先生方への期待が強まり、先生方は苦悩されているように思います。  今回は先生方をとりまく現状と、これからどうしたらよいのか私見ではありますが提案させていただきたいと思います。関係各位の参考になれば幸いです。

 

1.教育の現場はどうなっているのか

 

ある幼稚園の例です。 入園初日に母親が自分の家庭の生活習慣を幼稚園にも要求する。(集団生活に必要なルールを学ぶ場なのですが、その常識が欠落している。)いじめられたり、小さな擦り傷があった場合、翌日にその母親が幼稚園に怒鳴り込んでくる。保育士が子供に注意すると「親にいいつけるよ」とにらみかえす。気にくわない食べ物があると、床になげおとす。逆に好きな食べ物は、隣の子から奪う。椅子に座らないで走り回る。

 

全国連合小学校長会が2004年に調査。小学校一年から授業がなりたたない学級崩壊は、1133学級中152学級ある。

 

北海道大学で2004年に調査。 抑うつ傾向がみられるのは、小学生で7.8%、中学生で22.8%。うち本症とみられるのは、それぞれ1.6%、4.6%。

 

日本青少年研究所が2004年に高校生を対象に調査。「家で殆ど勉強をしない」中国8%、米国15%、日本45%。

 

文部科学省が2001年に調査。不登校児13万9千人、就学児童比で2.8%、理由は緊張・不安・無気力・友人関係。

 

これは私が体験した事例です。 ある高校に時間講師でいったのですが、生徒の三分の一が制服のズボンを下げたりシャツを表にだしたりと服装の乱れはひどいものでした。授業が始まっても腕枕をして不貞寝をしている生徒もおりました。休み時間になると殆どの生徒が携帯電話のチエックをはじめる始末です。「世も世紀末」という感じでした。

 

広汎性発達障害児(LD障害・ADHD・自閉症・アスペルガー症候群)が推定6%いるとみられている。

 

2003年度公立小中高の教師の病気休職者は6017人、そのうち精神疾患者は3194人で10年前の3倍だそうです。ある病院の調査では一般サラリーマンと比較して、生徒・親・同僚との人間関係の不調がたいへん多いそうです。

 

2. なぜこうなったのでしょうか

 

昔は家庭におじいちゃん・おばあちゃんがいて厳しくしつけをしてくれました。このしつけは日本人が長い経験からあみだした日本人が幸せに暮らしていくための知恵なのです。それが核家族化で失われてしまい、日本古来のよい生活習慣がなくなりました。

 

少子化・核家族化の時代という状況では、育児も難しいのですが充分な情報もないために間違った育児をしているように思います。(詳細は寄稿2を見てください)

 

昔のように食べ物にも事欠く状況では、家族全員で力をあわせて生きるために必死で働いたものです。結果として子供たちには生きる力をつけていたように思います。現在は暖衣飽食の時代ですから、家に帰ってもすることがありません。そのような状況では、本能的な生きる力が弱くなっていくのはやむをえないのですが、その点を大人社会が工夫をして改善しなければいけないと思います。しかし対策はとられていないと思います。(学校の先生方も子供たちの気力が弱いと感じているようです)

 

米国の調査ですが、父親が人生の意味を教育している家庭には、事件をおこす子供が少ないそうです。日本のように無宗教の多い家庭ではより重点をおいてこの点を教えなければいけないのですが、できていないように思います。昔のしつけが失われて自分だけが幸せになればよいという風潮がひろまっているように思います。

 

3.  これからどうしたらよいのか

 

昔は、学校の先生は教科書にもとづいて単純に教えておりました。しつけは家庭や地域社会が担っておりましたから、先生方は勉強を教えるだけでよく今のような精神的な悩みは無かったように思います。逆に「師の影を3歩下がって踏まず」といわれて尊敬されており、社会的なステータスも高かったように思います。現在よりは、はるかに教える側にとって教育しやすい環境にありました。しかし、今の状況は著しく難しい環境におかれています。昔、家庭や地域社会が担っていたしつけまで学校に求められているのです。学校だけに押し付けず、社会全体で子供の教育をしていく必要があると思います。

 

理想論を述べます。 学級崩壊・不登校の原因は家庭での育児に問題があります。歩いていける距離に育児ルームがあり、そこで育児の知識を得、情報交換ができ、子供たちも種々雑多な人達とまじわることができ、親にとっても子供にとっても、多用な人間関係の勉強ができます。屋外は自然公園になっており、そこで遊ぶことで子供たちの本能が刺激され、前頭葉(人間を正しくコントロールする高度な脳)が活性されます。学校では正しい人生論を教えることができる専任講師がいて、子供たちが人間として一番大切なことを教わることができる。正しい生活習慣・食生活も学ぶことができる。

 

人間としての基本ができていれば、先生は教育に専念できますから国際レベルから落ちはじめてている子供の学業レベルが向上すると思います。

 

4. しかし行政はすぐに動いてはくれない

 

国民世論が盛り上がらなければ行政は動きませんから、理想論が実現できるまでには時間がかかります。しかし子供たちはどんどん育っていきますから、今できることから手をつけなければなりません。とりあえず費用のかからないことから着手するべきでしょう。

 

親にたいしては、正しい育児の方法について学級連絡帳を利用して教育をしたらよいと思います。共通の育児基準があれば、親を通して子供への指導もしやすくなります。また子供も共通の規範・価値観で双方から教えられますからフォローもしやすくなります。

 

子供への指導は、現実には先生方にお願いするしかないでしょう。以下、ある学校の取り組み成功例を列挙しますので、参考にされて聖職として誇りをもって頑張ってほしいと思います。(このような成功例はまだまだたくさんあると思います)

 

①       地域から講師をボランティアとして採用し、土曜日に授業を行い、放課後も地域の人たちに挨拶運動をしてもらっている。

②       退職した教師を非常勤講師として採用し、20人学級を実現した。

③       生徒で4人グループを作り、お互いに教えあうようにしたら、生徒同士のコミュニケーション能力が向上した。

④       両親にだっこをしてもらい、翌日その感想を発表させたところ、親のぬくもりが気持ちよかったと全員が発表。

⑤       母親に子供が生まれたときの様子を作文に書いてもらい、それを学校で子供たちに発表させたところ、子供たち全員が号泣した。

⑥       月一回家で昼の弁当を子供たちに作らせて、親は絶対に手を出さないようにしたところ、親子のコミュニケーションが向上し、食べ物の大切さの理解が深まった。

⑦       野菜を子供たちに栽培させて、それを給食で食べさせるようにしたら、野菜嫌いが解消し、体内の消化酵素が増加して、3食を規則正しくとるようになった。

⑧       トイレ掃除を校長自ら生徒をまきこんで手洗いしたら荒れた学校が改善した。

 

以下は、私の実例です。

前述の高校の例です。 一時間目は彼らの態度を無視して、私は基本どおりの挨拶と誠実な態度で授業を行います。2時間目に服装・態度を注意しますと全員が素直に従ってくれます。3時間目は全員もれなくどんな小さなことでも褒めます。すると別れ間際には私に礼を言ってくれます。彼らは私を不思議そうにみています。おそらく彼らの人格を認めてくれる大人は今迄いなかったのでしょう。

 

私は現役時代、高校を卒業した新入社員の教育を30年間実施しておりました。学業の成績はよくない人が多い企業でした。初日にだれでもその気になればできる簡単なルールを教えます。(挨拶・掃除の方法・食事のルール等)それができたら徹底して全員の前で褒めます。座学はできるだけしません。実践教育を重点に行います。最終日には全員がルールを守れるようになりますので一人の落ちこぼれもなく合格します。こんなに褒められたことはないといって泣く人もいます。自分に自信がつきますのでその後の人生にプラスになっているものと思っております。

 

私は現在ある塾の講師をしています。平均合格率が二十数%の国家資格なのですが、90%の合格保証をしています。二十数回落ちてくる人もいますが、徹底してマンツーマンで教えます。服装の乱れ・態度はいっさい注意しません。しかし合格したときの喜びはすごく、生まれてはじめてこんなに勉強したことはない、自分に自信がついたといってくれます。職場に戻って立派な仕事をしてくれているものと思います。ですから服装の乱れは注意しなくてよいのです。

 

私の場合、企業からお金をもらって仕事をしていますので効果のある教育をしなければなりません。つまり「プロ」の仕事をしなければならないのです。プロとはアマチュアができないことをできるのがプロです。先生方もプロですから、不可能を可能にしてほしいものです。

 

ま と め

 

子供たちは社会を写す鏡ですから、このような時代になったのは100%大人社会に原因があります。早く改善に向けて取り組みをしなければと思います。子供たちも親も困惑しているように思います。この資料が子供たちの幸せにつながることを祈ります。

 

※ 一般的な企業の場合、「一生懸命社員」が2割「普通社員」が6割「ダメ社員」が2割の比率といわれております。優秀な経営者はこの6割の普通社員を優秀社員にレベルアップするモチベーション管理が上手とされています。(松下電器の創業者・松下幸之助さんはこのことがうまく出来た人です)  学校は企業と同列には論じられないかもしれませんが、トップの校長先生の役割は重要であると思います。

 

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