2005年5月 伊藤清勝
まえがき
1997年神戸の酒鬼薔薇事件以来不可解な事件が続けておきています。しかしどの事 件も原因がよくわからないという論調ばかりで、社会が真剣に解明する取り組みをしていないように思います。結果には必ず原因があります。真の原因を解明し ないかぎり正しい対策はとることは難しいのです。このような無責任な大人社会が子供たちの不可解な行動を生んでいるように思います。
私はサラリーマン時代、高校を卒業して入社した若者を、その企業から社会 人としての適応訓練を依頼され講習をしておりました。その訓練をとおして約30年にわたり若者をみてきました。この体験から不可解な事件を起こす背景(原 因)を検証し、今後の関係各位の取り組みの参考としていただきたいと思います。
思春期の子供が凶悪な事件をおこした場合、その育った環境のどこかに100%原因があり ます。子供をとりまく問題を広くとりあげてみたいと思います。この資料が子供たちの幸せにつながることを祈ります。
1.妊娠中の問題
妊娠2ヶ月目に脳が作られ、3ヶ月目には体も人間の形になります。リヨン 社池川明著「おぼえているよ ママのおなかにいたときのこと」からも分かるように胎児の胎内での記憶は高い確率でもっているようです。 このことは妊娠 中、母親は胎児にストレスをあたえないような生活をしなければならないことを示唆しています。つまり胎教が大切だということです。大人でもPTSD(心的 外傷後ストレス障害)を受けた人は脳の海馬が萎縮するという事例があるとのことですから、ストレスは脳にダメージをあたえることは容易に想像できます。母 親が強いストレスを受けると胎児の脳の血流が滞ることも確認されています。
2. 出産時の問題
誕生のとき狭い産道を通って出てきますが、そのときに頭を無理やり引っ 張ったりすると脳障害をおこす可能性があるともいわれております。誕生したときに赤ちゃんは泣きますが、これは胎内という居心地のよいところから突然外界 に出るわけですから、恐怖の叫び声だろうといわれております。胎内は暗いのにいきなり明るい照明のところへ出てくるのも赤ちゃんにとってはビックリでしょ う。 照明は暗くしなければいけません。
このように赤ちゃんは強烈なストレスにさらされているわけですから、早く 授乳をさせて安心させなければいけません。お母さんの心音や呼吸音でも安心するといわれております。前述の「胎内の記憶」では、誕生後のガラスケースは嫌 だったいう子供がいるそうです。
3. 誕生後の問題
WHO(世界保健機関)は、2年間は母乳を与えるよう指針をだしておりま す。栄養面はもとより精神的なプラスが大きいとされております。イスラム教では3年間母乳で育てるようにと経典に書いてあるそうです。モンゴルでは平均5 歳まで母乳を飲ませているとのことです。北欧でも2年間は母乳育児が昔から行われているそうです。関連はわかりませんがスエーデンでは不登校は大変少ない そうです。
南米コロンビアでは、1979年からカン ガルーケア(赤ちゃんを常に母親の胸に抱く)を実施したところ乳児突然死が75%も減ったそうです。米国の実験ですが、出産直後から赤ちゃんを添い寝させ た場合と授乳時のみ母親にあわせた場合と比較したところ、添い寝をした母親は母性本能が強くみられたが、そうでない母親は母性本能がうすく、ひどいケース では赤ちゃんを受け入れないこともあったそうです。
4. 母親の問題
昔は大家族でおじいちゃん・おばあちゃん・兄弟が大勢いましたので、育児 は楽でした。育児の知識も子供のときから目の前で兄弟が生まれ育児を手伝わされていましたので、知識も体験も豊富でした。ひるがえって今はどうでしょう。 核家族化で母親と赤ちゃんだけという状況が多いのではないでしょうか。赤ちゃんを抱いたのは自分が産まれて初めてというお母さんが大半ではないでしょう か。 チョットの間でも赤ちゃんをみてくれる人もいないわけですから、母親がノイローゼになっても不思議ではありません。昔でさえマタニテイブルーと いって「うつ」傾向になる人もいるそうですから、まして現代の状況ではもっときびしいでしょう。母親の精神状態は子供にストレートに伝わりますから、子供 の発育に影響があると思います。
母親と子供一人だけの生活ですと、母親の神経は子供一人に集中しますか ら、子供はプレッシャーを感じ母親の言うとおりに従い反抗期がなくなります。このストレスが思春期に爆発します。子供の性格は遺伝子で決まっており、親の 考えで人生の路線を決めてはいけないのですが、母親・子供一人ですとどうしても親の考える路線を強制しがちになりこれが子供にとってはストレスになりま す。
ある調査では、授乳中にテレビをつけている母親が70%にもなってい たそうです。赤ちゃんは母親からの話しかけで脳の前頭連合野(人にしかない脳で人間を正しくコントロールする役目をしている)が発達するそうです。
5.子供の人間環境の問題
昔は生まれた直後から、おじいちゃん・おばちゃん・兄弟・隣のおじさん・ おばさん・近所のガキ大将等、種々雑多な人間と交流があり赤ちゃんのときから複雑な人間関係を学んでおりました。当然イジメもありましたが、遊び仲間が大 勢いましたので必ず助けてくれる仲間もおりました。つまり学校に行く前からイジメの訓練を受けていたわけです。ひるがえって今はどうでしょう、幼稚園に入 るまで母親以外知りませんから、幼稚園で種々雑多な人間に出会うと登園するのが恐怖になります。つまりニート(仕事もしない・勉強もしない・結婚もしな い)予備軍になります。
昔は遊びというと外で近所の仲間と群れて遊んでいました。この群れ遊びが 人間の高度な能力「思いやり」が発達するのだそうです。今は塾通いでその機会は殆どないように思います。勉強より大切なことなのですが。また家庭で家族一 緒に食事をすることでもこの能力は高まるそうです。朝食はぬいて、夜は塾の帰りにコンビニ弁当を食べるというケースもあるらしいのですが。これでは家族と の暖かい団欒で豊かな感性を育てることができません。
以前ネット殺人事件というのがありました。これは友達からメールで「バ カ」といわれたことがきっかけでした。これは人間理解力が不足していたのが原因です。 人間のコミュニケーションは、言葉での伝達は5%です。あとの95%は「表情・み ぶり・態度・言葉のイントネーション・前後の状況」等で伝わります。これをボディランゲージといいます。つまり「バカ」といわれてもいろいろな意味がある のですが、彼女はこのことを知らなかったのでしょう。昔は、仲間同士の遊びで自然に身についていた技術です。
昔は出産は自宅でするのが普通でした。ですから子供のときから出産に立ち 会っておりましたから、母親の偉大さ・命の誕生の神秘さは自然と学んでおりました。 また昔は大家族でしたから、家庭や近所ではだれかが死ぬ場面があり、 近所総出で葬式をあげますから、人が死ぬことは大変悲しいことだと子供のときから体験で学んでいますので、命の大切さは充分理解できておりました。しかし 今はバーチャルな世界でしか体験できていません。
人間はパニックになったとき、瞬時に過去にそのような経験がなかったか チェックし対処方法を見つけるのだそうです。しかし経験がないと対処方法がわからずパニックになります。ですから小さいときから色々な人間関係や多くの体 験が必要なのです。
6. 食べ物の問題
骨を除いて人間の体は210日で生まれ変 わるそうです。子供は脳も体も10歳で完成しますから、この間の食事は大切です。日本人は農耕民族ですから体 は和食に向くように作られています。たとえば、腸の長さは欧米人に比べて2m長いそうです。ですから肉食をとりすぎると腸内で腐敗菌がたまりガンの元にな るといわれております。母親の食事メニューへの正しい知識が子供の心身の発達に大きな影響をあたえます。1972年の浅間山 荘仲間リンチ殺人事件では、赤軍メンバーの食事はインスタント食品ばかりであったため、カルシューム・野菜不足でキレやすい状態にあったといわれている。
仮に毎日加工食品だけで生活すると仮定すると、化学物質である添加物の量 が一年間で5kgにもなるそうです。
7.生活習慣の問題
ある調査では、午後10時以降に就寝する3歳児は1980年22%だったのが2000年には52%。夜の生活時 間が長いと結果的に昼の時間が短くなり、光をあびる量が減って脳内ホルモンのセロトニンが不足して脳の発達に影響がでる。また寝る時間が一定でない場合 は、慢性時差ボケの状態になり「いつも眠い・イライラする・コミュニケーション能力が不足」するそうです。
ある調査では小児肥満がこの10年で倍増してい るそうです。したがって子供たちにも生活習慣病が増えています。脂肪の取りすぎと運動不足が原因です。
暖衣飽食の環境で育つと、自律神経が弱くなり体力が低下し、結果的に精神 力が弱くなります。学校の先生方もこのことは感じているようです。
8.環境悪化の問題
ある調査では、母子の血液分析をしたところ神経系に影響するといわれる環 境ホルモン・ポリ塩化ビフェニールが母子ともに検出されたそうです。地球上の全ての魚に地球上最強の人工毒物といわれるダイオキシンが検出されているそう です。 もちろんごく微量なので健康に問題はないといわれています。
9. 宗教の問題
米国の調査ですが、父親が子供に人生の大切なことを教えている場合は、子 供が事件をおこす確立が少ないそうで。あたりまえでしょうが。殆どの国では、中心になる宗教が根付いており、それが結果的に無意味症候群(人生がむなしい と感じる)の発生を防止しているのかもしれません。無宗教でも親が正しい人生観を教えていれば問題ないのですが、現実には無理でしょう。世界的な大きな宗 教を勉強させるのもよいことかもしれません。放置しておくよりはいいでしょう。
まとめ
今の殆どの家庭は、子供に個室を与えますがこれは家族のだんらんがすくな くなり、人間関係の貴重なシュミレーションが不足します。個室を作るのであれば、必ず居間を通過しなければならない構造にしてほしいものです。携帯電話・ コンビニが子供の孤立化をまねいています。便利な世の中が子供の発育にとってはマイナスなのです。
産まれたばかりの赤ちゃんはみな元気でかわいいのです。その後の育児環境 で良くも悪くもなっていくのです。 本人に責任は無いのです。正しい育児の方法に社会全体で取り組むことが大切と思います。






